長谷川堯の生涯と功績|長谷川博己の父が遺した名著と建築美学の真相
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長谷川堯の名を一躍全国に轟かせたのが、1972年に刊行された処女作にして不朽の名著『神殿か獄舎か』です。同書は当時の建築界に激震を走らせ、権威ある日本建築学会賞(論文・作品賞)を受賞しました。
長谷川はこの著作の中で、近代建築が合理性や効率性を追求するあまり、かつて建築が持っていた象徴性(神殿)と拘束性(獄舎)という根源的な二面性を忘れ去り、人間を平板な記号へと矮小化していると痛烈に批判しました。丹下健三をはじめとする当時のスター建築家たちが作り出すメガストラクチャーに対し、個人の孤独や記憶に寄り添う建築の価値を力強く主張したのです。
さらに1979年には、日本の伝統的空間や都市の襞(ひだ)に息づく情緒を緻密な筆致で描いた『建築有情』を発表。同作は第1回サントリー学芸賞(思想・歴史部門)を受賞し、建築論の枠組みを超えた日本文化論の金字塔として現在も高く評価されています。