紆余曲折とは?意味や波瀾万丈との違い・正しい使い方を徹底解説
紆余曲折とは?意味や波瀾万丈との違い・正しい使い方を徹底解説の具体的な内容に迫る! 専門的な視点で紐解きます。
組織行動学や現代の心理学では、「ナラティブ(語り・物語)」が人間のモチベーションや他者からの共感にどれほど決定的な影響を与えるかについての研究が進んでいます。結論から言えば、人間は「最初から最後まで順風満帆だった成功談」には深く共感できず、信頼も抱きにくいという認知特性を持っています。
神話学者ジョセフ・キャンベルが提唱した「英雄の旅(ヒーローズ・ジャーニー)」構造が示す通り、主人公が旅立ち、試練に直面し、仲間と衝突し、迷走した末に勝利を手にするというプロセスこそが、人間の脳に最も強いカタルシスと感動をもたらします。ビジネスにおける「紆余曲折」は、まさにこの試練と迷走のフェーズに該当します。
したがって、リーダーや事業責任者が自らの経験を語る際、意図的に「順調だった部分」だけを切り取るのは得策ではありません。「実はここで重大な方針対立があり、一度は頓挫しかけた」「この局面での紆余曲折があったからこそ、組織としての強固な結束が生まれた」という事実を開示する自己開示(セルフトーク)こそが、メンバーのエンゲージメントを高める起爆剤となります。
ただし、この「紆余曲折の語り」を活用するにあたっては、明確な向き・不向きの基準が存在します。
- 語るべき場面(向いているケース):
- 新規事業の立ち上げ秘話や採用活動における先輩社員インタビュー
- 退任時や周年行事におけるリーダーの振り返りスピーチ
- 難易度の高い研究開発や製品開発のバックステージストーリー
- 語るべきではない場面(避けるべきケース):
- 納期遅延や契約不履行に関する顧客への事実確認・謝罪対応
- 意思決定の遅さを「熟慮」と錯覚させようとする言い訳の場面
- まだゴールへの道筋が見えていない進行中のパニック状態での報告
苦労や迷走は、それを乗り越えて結果を出した瞬間に初めて「価値ある紆余曲折」へと昇華します。結果が出る前の段階で軽々しく口にすることは、自らのマネジメント能力の欠如を露呈することと同義であると心得るべきです。