黒川雅之の軌跡と美学|兄・紀章との差や名作Gom誕生秘話を解剖

黒川雅之の軌跡と美学|兄・紀章との差や名作Gom誕生秘話を解剖にまつわる最新トピックを分かりやすく発信ます。

黒川雅之氏の名を世界に轟かせた決定的な金字塔が、1972年に発表された「GOM(ゴム)シリーズ」です。

当時、ゴムという素材はパッキンやタイヤなどの工業用部品、あるいは実用一点張りの消耗品として扱われており、洗練された生活道具の主役に据えるという発想は皆無でした。黒川氏はこの「黒く、光を吸い込み、しっとりとした触感を持つ工業用エラストマー素材」に着目し、真鍮やステンレスといった冷硬な金属と組み合わせることで、強烈なコントラストと詩的な美しさを生み出しました。

GOMシリーズの灰皿、コースター、ステーショナリー、時計などは、発売されるや否や世界的なセンセーションを巻き起こし、ニューヨーク近代美術館(MoMA)のパーマネントコレクションに選出。工業素材に「官能的な美」と「触覚の心地よさ」を吹き込んだこの試みは、工業デザインの歴史におけるパラダイムシフトとなりました。

さらに、1980年代以降に手がけた「CHAOS(カオス)」や「DOMANI(ドマーニ)」などの時計デザインにおいても、黒川氏の身体論は遺憾なく発揮されています。「時間とは数字を追うことではなく、人間が空間の中で生きるリズムである」という哲学のもと、無駄を極限まで削ぎ落としながらも有機的な温もりを宿したフォルムは、コレクターの間で現在も伝説的な名作として高額で取引されています。

橋本 菜々子

橋本 菜々子

トレンドリサーチャー

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。

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