ドラゴン・タトゥーの女、続編が消えた本当の理由とは?
ドラゴン・タトゥーの女、続編が消えた本当の理由とは?について押さえておきたい 注意点を分かりやすい構成で解説いたします。
調査の果てにミカエルとリスベットが辿り着いた真実は、人間の邪悪さを極限まで凝縮したものでした。ハリエットの失踪の背後にいたのは、彼女の父ゴットフリードと、実の兄であるマルティン・ヴァンゲルによる実父・兄妹間の凄惨な性的虐待と連続猟奇殺人でした。
自らの地下拷問室にミカエルを拘束したマルティンは、長年にわたり女性たちを拉致・拷問・虐殺し続けてきた事実を冷笑混じりに告白します。「人は他人に危害を加えることよりも、無礼と思われることを恐れる」というマルティンの言葉は、被害者たちが危険を察知しながらも逃げ出せなかった心理的トラップを冷酷に突いたものでした。間一髪のところで突入したリスベットによりミカエルは救出され、逃走したマルティンは車の衝突事故により炎上死を遂げます。
そして最大の謎であった「ハリエットの生死」にも驚愕の結末が訪れます。ハリエットは死んでおらず、従姉妹のアニータの手引きによってロンドンへ脱出し、アニータの身分を借りてオーストラリアの牧場で密かに生き延びていたのです。ハリエットが生きてヘンリックと涙の再会を果たしたことで、40年にわたる事件は完全決着を迎えました。
しかし、本作を唯一無二の傑作たらしめているのは、事件解決後のエピローグにおけるリスベットの切ない心理描写です。ミカエルと体を重ね、ヴェンネルストレムの不正資金をスイスの銀行から鮮やかに横領してミカエルを裁判の敗訴から救った彼女は、人生で初めて「特定の他者への愛情と信頼」を抱きます。バイク用の高級革ジャケットをクリスマスプレゼントとして買い、ストックホルムのミカエルのもとへ向かったリスベット。しかし彼女が目にしたのは、ミカエルが長年の不倫相手である共同編集長エリカ・ベルジェと親密に寄り添って歩く姿でした。
誰にも気づかれぬよう踵を返し、プレゼントをゴミ箱に投げ捨てて冷たい夜の闇の中へバイクで疾走していくリスベット。この結末の意味は、幼少期に精神病棟へ強制収容され、公的後見人から性的暴力に晒されるなど「人間不信の塊」として生きてきた彼女が、他者と結ぼうとした心理的バウンダリー(境界線)の不可逆的な崩壊です。愛を信じた瞬間に訪れた裏切り。それは勧善懲悪のミステリーの枠を超えた、魂の孤独を描いたビターエンドとして観客の胸に深く刻まれました。